民事再生申立てと取締役会

文責:弁護士 上田佳孝

最終更新日:2021年12月07日

1 民事再生申立て前には取締役会決議等で取締役の過半数の賛成が必要

 民事再生は、裁判所に申請して借金を減額してもらい、分割で返済する手続きです。

 民事再生することは、会社の重要な業務執行ですから、取締役会を設置している会社では取締役会決議をしなければならず、その過半数の賛成を得なければなりません(会社法362条4項)。

 取締役会を設置していなくとも、取締役が複数いる場合は、過半数の賛成を得る必要があります(会社法348条2項)。

2 取締役会招集方法の工夫

 取締役会の決議は、議決に加わることのできる取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数をもって行うことになります(会社法369条1項)。

 出席の機会を与えていない取締役がいると、取締役会決議が無効になり、民事再生申立自体が無効になりかねませんから、メールや文書で招集通知を取締役が出席できる程度の時期に送っておくのが通常です。

 取締役会の招集通知に議題を記載する必要はなく、記載のない議題についても決議できるので、民事再生することを記載する必要はありません。

3 取締役会決議は民事再生申立ての直前にする

 取締役会決議をしたときには民事再生することを決めたことになり、裁判所の記録に残ります。

 決議をした後に大きな仕入れを行うと、仕入先によっては、約束どおり払う意思や能力がなかったのに仕入をしたのは詐欺的借入にあたると主張して、手続きが難航するおそれがあります。

 ただ、民事再生を裁判所に申請する行為に取締役の過半数の同意が必要なので、裁判所に申請する前には決議する必要があります。

 そこで、取締役会決議は、裁判所に民事再生の申立てをする直前、たとえば前日や申立て当日の朝に行うのが通常です。

4 全員の賛成が見込める場合には、各々に同意書を書いてもらう方法もある

 取締役会決議で決議する代わりに、取締役全員が賛成するのであれば、一堂に会して決議する必要はありません。

 そこで、代表取締役以外に親族1,2名しか取締役がいない場合は、取締役会を招集しなくても、民事再生申立てをする旨の同意書に署名・押印してもらうのでも足ります。

5 取締役に言う順番も重要

 たとえば、取引先の銀行から出向している取締役がいる場合は、その取締役に言うことで債権者である銀行側に伝わり、口座が予想より早く凍結されたり、反対するよう他の取締役を説得する可能性があります。

 民事再生に反対する可能性がある取締役がいる場合は、いつどういう順番で民事再生することを言うかを含めて、弁護士とよく打ち合わせる必要があります。

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